某日 14:28

某所


川村 「君はこの前の運動会の時の……慧君だよね。迷子?」

弟主 「ううん、おにいちゃんまってるの」

川村 「お兄さんは何処に行ったのかな?」

弟主 「どっか。だからまってるの」

川村 「それは俗にいう迷子では………」

弟主 「そうともいうかもしれないきがしなくもない」

川村 「複雑な!やっぱり一色の弟だなー」

弟主 「にてる?うれしい!」

川村 「そうそう、今年サンタさんからプレゼントもらったか?」

弟主 「おにいちゃんからもらったよ!」

川村 「え」

弟主 「あのね、てれびでね、ひとがまじめにやっていることならね、きづかないフリしてあげるのもやさしさだってゆってたの」

川村 「つまり」

弟主 「ぼくがおにいちゃんのこえききまちがえるわけないじゃん」

川村 「君が気づいてるってこと一色は…………」

弟主 「しらないよ。カワムラもおにいちゃんにいったらひぎ・カンガルーだからね!」

川村 「うっ!」

弟主 「いわないよね」

川村 「(言えねぇ………)…………はい」

弟主 「でもね、おにいちゃんがね、ぼくのためにいっしょうけんめいになってくれるの、うれしいの」

川村 (一生懸命過ぎて周りはある意味引いてますがね………)

弟主 「おにいちゃんの中のね、ぼくが、サンタとかしんじてるようなせいかくならね、それをね、えんじてあげるのもね、ヤブサカでないとおもうんだよ」

川村 「じゃあきみは一色の前では本当の自分じゃないのか?」

弟主 「ぼくね、ひとがのぞむじぶんつくるの、すごいとくいなの。だからいっぱいじぶんがあってじぶんでもわかんないの。だけどね、おにいちゃんのためのじぶんはこころのふかーいところからでてくるおもいでできてるから、きっとわるいことじゃないんだよ」

川村 「君、もっと素直になったほうがいいよ」

弟主 「え?」

川村 「取り繕うことになれちゃうとさ、いざって時に本心が出にくいんだよ。だからさ、すこしずつ色んな自分じゃなくてさ、ホントの一つだけの自分、見つけていったほうがいいよ」

弟主 「カワムラってオヒトヨシなんだね」

川村 「そうかな?一色は君のことが本当に好きだから、どんな君でも受け入れると思うよ。だから、そのこころのふかーいところにある想いを相手にそのまま伝えればいいんだよ。それで自分の本当の姿を見てもらえばいいんだ」

弟主 「ムズカシイこというなー。カワムラは」

川村 「確かに難しいよな。だけど君はすごく頭がいいから、意味、わかっただろ?」

弟主 「…………うん。じつをいうとね、もうね、おふろひとりではいれるんだよ。でもおにいちゃんはぼくとはいってぼくのからだあらったりするのすきみたいだから」

川村 「一色の心配性な心臓にはちょっと悪いかもしれないが、今度一人で入ってみたらどうだ?」

弟主 「うーん、うん………」

兄主 「慧!こんなところにいた!」

弟主 「おにいちゃん!」

川村 「子どもほっとくなよ、一色……ってお前も子どもか」

兄主 「そう言うお前もな。ありがとう、見ててくれたんだろ?慧、母さん探してるから早く帰ろうな」

弟主 「うん!」

兄主 「じゃあな、川村。また新学期」

川村 「ああ、またな………一色」

兄主 「うん?」

川村 「お前さ、可愛いんなら、本質、見てやれよ」

兄主 「は?」

川村 「盲目の愛じゃ、いつか壊れるってことだよ。それだけ、じゃあな」

兄主 「はぁ?変な奴」

川村 (目の見えるお前より、お前の弟はいろんなもん見えてるみたいだぜ……)