川村 |
「今年のクリスマスが土曜日で良かった、本当に良かった」
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兄主 |
「なんでだよ」
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川村 |
「去年、25日金曜日で終業式だった時、慧が慧が言って一日中不機嫌だったじゃないか」
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兄主 |
「当たり前だ。折角サンタに扮してプレゼント置いたのにその反応を見ないまま登校なんて最悪だった」
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川村 |
「ちなみに今日のご予定は?」
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兄主 |
「帰ったらまず慧と遊ぶ。そんで慧が好きなホットケーキで俺からのクリスマスケーキを作る」
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川村 |
「お前、ホットケーキはプロ級に上手いよな……」
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兄主 |
「慧の好物だからな。最初につくった時、後から知ったんだが俺は慧に危険物を食わせてしまったらしい。火の通ってない小麦粉はお腹壊すんだって。慧は壊さなかったけど」
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川村 |
「あの子は壊さないと思うけどな」
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兄主 |
「今日はイチゴとナマクリームとキウイとミカンとバナナと………とりあえず色々用意してフルーツサンドにしてやるんだ」
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川村 |
「本当に弟のためなら苦労惜しまないよな、お前」
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兄主 |
「兄弟ってそういうもんだろ?」
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川村 |
「俺は一人っ子だが答えよう、絶対違うと思う」
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兄主 |
「それは可愛さの違いだな」
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川村 |
「はい、本日12回目の『可愛い』いただきましたー」
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兄主 |
「何だ12回しか言ってなかったのか」
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川村 |
「少ないのかよ!お前……弟に構いすぎて去年みたいに冬休みの宿題終わらないとかやめろよ?見せないからな」
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兄主 |
「ハッ、日記以外もう終わってるぜ!」
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川村 |
「はぁ!?ドリルなんて一昨日渡されたばっかだろうが!」
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兄主 |
「一昨日と昨日は、慧が母さんと九州の大学病院の脳神経外科に行ってたんだ。帰ったらすぐ全部やった。たったの20ページだぞ」
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川村 |
「読書感想文は?」
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兄主 |
「出されることが分かってるんだからこの前慧がいない時に書き上げておいた」
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川村 |
「社会の調べ学習は?」
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兄主 |
「先月慧の病院につきあうついでに職業リサーチさせてもらった。その日の待合室で書き上げといた。あの先生前々から言ってくれてたから助かったな」
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川村 |
「お前、その情熱ちょっと分散した方がいいよ」
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兄主 |
「だって冬休みはやることがいっぱいなんだ!明日のクリスマス、大掃除、初詣、温泉&スキー旅行……慧のゲレンデデビューだぞ!俺決まったその日から毎日スキーのビデオ見てイメトレしてるんだ!」
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川村 |
「お前にとってもゲレンデデビューだと思うが」
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兄主 |
「慧の前で無様にこけられるもんか!」
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川村 |
「で?今晩はまたご苦労にサンタになるわけだ。それは父親の仕事だろ」
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兄主 |
「他の子どもならどんなに重肥満コレステロールヒゲ爺がサンタやってもいいが、慧のサンタだけは譲らん!」
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川村 |
「今年のプレゼントは?」
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兄主 |
「ピアノの形したオルゴール。ふた開けたら鳴んの」
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川村 |
「去年はなんだっけ?」
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兄主 |
「おもちゃのハープ、触ったら光って音なる奴。低いドから高いドまでしかないけど。一時期はまりすぎて構ってくれなかったんだよなー、やっぱりもっと一緒にいてあげないと独り遊びに慣れちゃうのかな……」
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川村 |
「(愛が重い………!)ご苦労さん、せいぜいバレないように頑張れ」
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兄主 |
「おう!」
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