12月24日(金)22:14

一色家宅、階段踊り場


母親 「またそんな恰好して……」

兄主 「なにが悪い!立派なサンタスタイルだぞ!」

母親 「フリース着て腰にお父さんのベルト巻いて、うちにあった古い毛布でズボン作って長靴にフェルト貼り付けてブーツにして・・・上から黄色黒紫茶色って何処がサンタよ」

兄主 「俺は慧だけのサンタだから色なんて関係ない!重要なのはフリースと毛布のフワッとした手触り、ブーツのフェルト生地、ベルトの本物の革の感触!」

母親 「つけ髭までして………」

兄主 「慧が起きたら危ないからな!だからヒゲを用意した!ある風の強い日に何処からか吹っ飛んできたこの鳥の巣みたいなカツラ!それを加工して俺はヒゲを作った!」

母親 「どうやってそれをくっつけたのよ」

兄主 「つけまつげ用接着剤、お借りしましたー」

母親 「あ、コラ!」

兄主 「というわけで慧はもうぐっすりしてる頃だと思うので!」

母親 「待ちなさい!」

兄主 「母さん静かに!慧が起きる!」

母親 「なんでこの子はこんなに目敏いんだか………。」

兄主 「それは慧のおにいちゃんとして一挙一動見逃さないように日々鍛えてるからな」

母親 「育て方間違ったかしらねぇ」

兄主 「あんまり育てられた覚えないぞ!俺は3歳でもう自分のご飯の準備してたからな!」

母親 「仕方ないでしょ、あの時は慧が生まれて色々病院回ってたし………」

兄主 「連れてけよ!俺そんなに騒ぐようなガキじゃなかっただろ!」

母親 「あんた連れてくと慧がお母さんの言うこと聞かないのよ」

兄主 「だからって3歳児を丸一日育児放棄ですか!?」

母親 「しっかりした子に育ってくれてよかったわー」

兄主 「8歳にして人格形成しっかりされちゃってますよ、俺は!」

母親 「今年も慧のためにプレゼント買ったの?」

兄主 「その年貰ったお年玉をその年の慧へのクリスマスプレゼントにするってのがいつものことだからな!」

母親 「去年はおもちゃのハープだったわよね」

兄主 「そう言う楽器系だと慧が独り遊びに夢中になってお兄ちゃんがさびしいので今回はオルゴールです!」

母親 「お父さんよりお父さんらしいわね、嵐」

兄主 「俺はおにいちゃんだ!そして今はサンタだ、慧専属の!」

母親 「はいはい、じゃあ慧のサンタさん。このプレゼントも慧のベッドに一緒に置いてきてちょうだい」

兄主 「了解!お菓子の靴か、すげえでかいな」

母親 「嵐のはリビングに置いておくからね」

兄主 「…………俺将来ぜったい夢のない世知辛い大人になると思う」

母親 「もうなってるじゃない、最後除いて」

兄主 「それを平然と受け止める親を反面教師にして育ちました、一色嵐8歳です。」

母親 「口が悪い子ね、ほら、さっさと行ってきてあんたも早く寝なさい!」

兄主 「は〜い!」